小児の近視治療
小児の近視治療
お子様の「見える」を守るために定期的な眼科健診にお越しください
近視は軽度でも、将来的に緑内障や網膜剥離などの目の病気が発症するリスクが高まります。進行を予防するためには生活習慣を見直し、眼科診察・治療を定期的に行うことが重要です。
大切なお子様の「見える」を守るため、子どものうちに近視を予防し、進行させない取り組みがとても大切です。
小児の近視治療について
世界中で子どもの近視が増えており、大きな問題となっています。近視は軽度でも将来の目の病気の発症に大きく影響するのではないかと言われています。また近視は年齢が低い時に発症するほど、年間進行量が大きいと報告されています。 大切なお子様の「見える」を守るため、子どものうちに近視を予防し、進めない対策がとても大切です。
近視とは
近視とは、眼球の形が前後方向に伸びて、ピントの合う位置が網膜より前になっている状態です。近くのものははっきり見えますが、遠くのものがぼやけて見えます。
近視の原因
近視は遺伝と環境の両方が関係します。親が近視の場合、子どもが近視になる可能性は高いと考えられます。環境要因としては、屋外活動の減少や、スマートフォンやタブレット学習の普及で近いところを長時間見る作業が増えたことが挙げられます。
近くで作業を長く続けると、水晶体の厚さを調節している毛様体筋が異常に緊張して、一時的に近視の状態になる場合があります。
近視になるとなぜ困るのか
近視は眼鏡をかければ問題ないと考える方も多いかもしれませんが、研究で近視が将来の目の病気の発症に大きな影響を与えることがわかってきました。軽度な近視の方でも、近視ではない方と比べて緑内障を発症するリスクは4倍、網膜剥離を発症するリスクは3倍になり、近視以外の目の病気にかかる可能性が高まることが知られています。
近視進行予防のためにできること
生活習慣の見直し
まずは生活習慣を見直すことが大切です。外で遊ぶ時間を増やす、近くを見る作業は正しい姿勢で30cm以上離れて行う、休憩を30分おきにとることは近視の進行を抑える効果があると知られています。
定期的な眼科診察・治療
定期的な診察・治療を行うことで近視の進行を抑えられる可能性があります。
近視の治療方法(保険診療)
トレーニング・点眼治療で、近視の進行を抑えられる可能性があります。ただ効果には個人差があり、すぐに効果が出て視力が回復する場合もあれば、数ヶ月程で効果が出てくる場合もあります。
また一度視力が回復しても、スマホや、パソコンなど長時間近くを見続けるような目を酷使する生活習慣が続く場合は、視力低下も繰り返しやすくなっています。特に成長期のお子様は治療をやめると視力低下や近視が進行してしまう可能性が高く、トレーニングを長く続けることが必要です。
お子様の近視を予防・進行させないために、生活習慣の見直し、定期的に眼科での診察・治療を続けることが大切です。
下記の治療方法は保険診療で治療することができるため、子ども医療証などをお持ちのお子様は無料となります。
①視力回復トレーニング
機械で絵を移動させて遠くと近くを交互に見るトレーニングを行います。毛様体筋が縮んだり緩んだりを繰り返して、筋肉がリラックスすることで目の調節機能を高める効果があります。
②調節麻痺点眼治療(ミドリンM)
寝る前に1日1回点眼することで、毛様体筋の緊張を和らげて目の調節を休める効果があります。
③調節麻痺点眼治療(ミオピン)
毛様体筋の調節機能を改善する効果があります。
近視の治療方法(自費診療)
④低濃度アトロピン点眼治療(自費診療)
日本でもまだ研究段階である新しい治療法であり、自費診療となっています。
アトロピン1%点眼液は日本でも普段から小児の斜視・弱視の診療に用いられるお薬です。毛様体筋を麻痺させる作用があり近視の進行を抑える効果があると知られていましたが、強いまぶしさや、ピントがあわずぼやけて見える副作用があり治療には使用できませんでした。
しかしSingapore National Eye Centre(シンガポール国立眼科センター)の研究※1で100倍に濃度を薄めた0.01%アトロピン点眼であっても点眼を行わない場合に比べて60%近い近視の抑制効果があること、さらに副作用もほとんどないことが示されました。
日本で行われた研究※2でも効果が確認されています。0.01% アトロピン点眼液の2年間の近視進行抑制率は、点眼を行わない場合と比べて屈折値15%、眼軸長18%でともに有意な差を認めました。0.01%アトロピン点眼液は副作用をほとんど認めず日常的な使用が可能で、かつ近視進行抑制効果を認めると解釈されました。
※1シンガポール国立大学の臨床試験で、0.01%アトロピンの近視抑制効果が証明されました。 Ophthalmology 2012;119(2):347-54
※2 日本国内の6-12歳の児童を対象にした臨床試験で0.01%アトロピンの近視抑制効果が証明されました。 Jpn J Ophthalmol. 2021;65(3):315-325.
マイピオン
マイオピンは小児期の近視進行を抑えることを目的に、アトロピン0.01%を配合した点眼液です。 Singapore National Eye Centre(シンガポール国立眼科センター)の研究に基づいて開発された薬です。日本では未承認医薬品になります。
日本国内では2024年4月時点で、同一の成分を含む日点アトロピン1%点眼液®(日本点眼薬研究所)は承認されていますが、低濃度(0.01-0.05%)アトロピン点眼液は承認されている医薬品はありません。
当院で使用している点眼液は シンガポールで製剤化されているアイレンズ社のものを当院で個人輸入しております。個人輸入された医薬品などの使用によるリスクに関する情報は下記URLをご確認ください。
個人輸入において注意すべき医薬品等について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
近視進行抑制点眼マイオピン(Mypione)の特徴
- 毎日両目に1滴点眼して治療します。
- 各容器(1本5ml)は両目で1ヵ月間の使い切りになっております。
- 日中の光のまぶしさに影響を及ぼさないため、サングラスもほぼ不要です。
- 目の遠近調整機能(手元を見る作業)にもほとんど影響を与えません。
- 近見視力の低下にほとんど影響を与えず、更に進行性眼鏡も不要と言われています。
- 本製品はGMP(医薬品製造管理および品質管理基準)準拠の工場で製造されています。
マイオピンの安全性について
シンガポール国立眼科センターのアトロピン0.01%点眼薬を2年間継続した研究結果の安全性については、以下の報告がありました。
- アレルギー性結膜炎及び皮膚炎の報告はありませんでした。
- 眼圧に影響を与えないとの報告でした。
- 白内障を形成するとの報告はありませんでした。
- 点眼終了後も目の遠近調整機能の低下、また瞳孔がひらき続けてしまうという報告はありませんでした。
- 電気生理学上、網膜機能に影響を与えるという報告はありませんでした。
マイオピン点眼治療の対象となる方
- 近視が進んで視力が下がってきているお子様(小学生-18歳くらいの方)
- 軽度または中程度の近視の方(-6.0D以下の近視)
- ※視力異常をきたす他の眼疾患がないこと
マイオピン点眼の治療方法
1日1回、寝る前に両目に1滴ずつ点眼してください。
点眼を忘れてしまった場合は日中には点眼せずに翌日の夜寝る前に1滴点眼します。
費用
初回検査(治療前検査)は保険診療で行います。
治療開始後は処方・診察・検査は同日に自費診療で行います。
点眼(1ヵ月分1本)・診察・検査代を含めて、1ヶ月6,000円(税込)になります。
※低濃度アトロピン点眼治療は保険適用外(自費診療)となるため保険診療とは同日に行えません。健康保険証は使用できませんのでご理解のほどよろしくお願いいたします。
アトロピン点眼治療の注意点
- 治療の開始前に対象・適応になるかの診察・検査を行います。
- 治療開始後も治療効果や副作用を確認するために毎月診察・検査が必要です。
- 点眼を忘れてしまった場合は日中には点眼せずに翌日の夜寝る前に1滴点眼してください(日中に点眼すると瞳が広がりまぶしさを感じる可能性があります。)
- 開封したら1か月で必ず破棄してください。
- 近視が進行しやすい成長期の間は、継続治療をお勧めいたします。
- 近視の進行を抑えることが目的であり、現在ある近視が治るわけではありません。
- 効果には個人差があり、どなたにも必ず効果が出るものではありません。
- 充血や目のかゆみ、見えにくさなどの不快な症状があればすぐに点眼を中止し、受診してください。
⑤サプリメント
クチナシ由来の色素成分「クロセチン」はニンジンに含まれているβ-カロテンなどの仲間(カロテノイドの一種)で抗酸化作用のある成分として近年注目されています。慶應義塾大学と大阪大学、ロート製薬の研究グループは、「クロセチン」が小児の眼軸長伸長・屈折度数の近視化を有意に抑制することを確認しました。※1
ロートクリアビジョンジュニアEX®にはクチナシ由来の色素成分「クロセチン」が7.5mg含有されてます。6才から服用でき、味は無味無臭の小粒なソフトカプセルです。すぐに結果はでないため、6か月くらい飲み続けることが必要です。近視が治るわけではありませんが、近視の進行の程度を抑制する効果が期待されています。
【販売価格】
1箱30粒入り:税込3,300円
「ロートクリアビジョンジュニアEX®」は取り扱い医療機関のみで購入できるサプリメントです。一般に販売されている「ロートクリアビジョンジュニア」はこちらと比べクロセチンの含有量が少ない商品です。ご注意ください。
※1慶應義塾大学と大阪大学、ロート製薬の研究グループは、「クロセチン」が小児の眼軸長伸長・屈折度数の近視化を有意に抑制することを確認しました。
Mori K, Torii H, Fujimoto S, et al. J Clin Med. 2019 Aug 7;8(8):1179
期待の成分クロセチンの近視進行抑制効果 | ロート製薬: 商品情報サイト (rohto.com)
⑥超音波治療
超音波で眼球をマイクロマッサージすることで毛様体筋の緊張をほぐし、血流を改善し、眼精疲労の緩和や裸眼視力の回復にも効果があると言われております。
【レンタル価格】
2週間:税込6,600円/4週間:税込12,100円
【購入価格】
税込198,000円
(※当院でお試しもできます)
⑦アイサポートめがね
当院では視力訓練機(MD-SS型視力訓練機)とは別で、「アイサポートめがね」を利用したピント調節の調整訓練も行っています。「アイサポートめがね」をかけた状態で2分間まばたきをすることでピント調節に関わる毛様体筋を休め、瞳孔の大きさに関わる筋肉を適切に働かせることができます。
「アイサポートめがね」は継続して使用することで効果を発揮しますので、お家でも使用していただけるよう当院で販売をしています。お子様のトレーニングだけでなく、大人の方の疲れ目などにも効果的ですので、家族全員で使用していただけます。気になる方はお気軽にお問い合わせください。
※アイサポートめがねは世界5か国で特許を取得している特殊なレンズを使用しています。類似品によってはまぶしさを感じるなど目に悪影響が起こる場合もあります。
【購入価格】
税込26,400円
小児の近視治療の
よくあるご質問
子どもはなぜ近視になりますか?
近視は遺伝と環境の両方が関係します。親が近視の場合、子どもが近視になる可能性は高いと考えられます。環境要因としては、屋外活動の減少や、スマートフォンやタブレット学習の普及で近いところを長時間見る作業が増えたことなどが挙げられます。
親の近視は子どもに遺伝しますか?
近視には遺伝と環境の両方が影響しますが、小学校に入る前からの強い近視は、遺伝が環境よりも強く影響しています。目の病気を併発しやすい病的近視や、近視以外の病気が隠れていることがあります。近視の両親から生まれた子どもが近視になる確率は高くなり、近視の程度も遺伝する場合があります。
子どもの近視は何歳まで進行しますか?
子どもの近視の多くは小学校3〜4年生の間になり成長期の17歳ころまで進行するとされています。しかし、近年は6歳未満で近視になるお子さんも増えており、近視のタイプによっては大人になってからも近視の病気が進む場合もあります。
近視は手術で治りますか?
低濃度アトロピン治療中でもメガネやコンタクトレンズを使ってもよいですか?
点眼をしていても、メガネやコンタクトレンズを日常生活でご使用いただいて構いません。目薬をする時にはコンタクトレンズは外してから指してください。
低濃度アトロピン点眼の目薬だけを処方してもらうことはできますか?検査・診察に通うのが大変です。
低濃度アトロピン点眼液はまだ新しい治療であり、治療の効果や副作用がないかなど目の状態を毎月定期的に確認する必要があります。また、低濃度アトロピン点眼液の処方は保険適用外(自費診療)となるため保険診療とは同日に行えません。お手数をおかけしますがご理解のほどよろしくお願いいたします。
低濃度アトロピン点眼の目薬を使うときの注意点はありますか?
開封したら一か月で必ず破棄してください。
点眼薬のボトルの先端が目や手指に触れると雑菌が増殖し、感染症のリスクが高まります。ボトル先端が目や手指に直接触れないように点眼して下さい。
低濃度アトロピン点眼を忘れてしまったらどうしたら良いですか?
日中に点眼をすると副作用の効果でまぶしさやぼやけを感じる可能があるため、点眼を忘れてしまった場合は日中には点眼せずに翌日の夜寝る前に1滴点眼してください。
低濃度アトロピンの副作用はどんなことがありますか?
点眼してから2時間~7時間前後は瞳が広がり、まぶしさやぼやけを感じる可能性があります。 時間が経てば元の見え方に戻るので、就寝前に点眼すれば日常生活には問題ありません。充血や目のかゆみ、まぶしさ、見えにくさなどの不快な症状があればすぐに点眼を中止し、受診してください。全身の副作用は現時点ではっきりした報告はありません。
低濃度アトロピンはどのくらい治療を継続した方が良いですか?
2年間の継続使用で近視進行を抑制する効果があったという報告があります。
(Jpn J Ophthalmol. 2021;65(3):315-325参照)
成長期の間は近視が進行しやすく、一度効果が出ても治療をやめてしまうと近視が進行する場合があります。成長期の間は治療を継続することをお勧めします。
低濃度アトロピン治療をすれば近視がよくなりますか?
この治療では近視は回復しません。近視の原因である屈折や眼軸長の進行を抑制するのが目的であり、現在ある近視が治る治療ではありません。効果には個人差があり、どなたにも必ず効果が出るものではありません。
小児の近視治療に
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